バラの季節管理では、春から秋にかけバラの育成に携わり、庭の景観を整える作業を行います。
カミキリムシの発生時季にあたる夏から秋の手入れでは、見回りから対処にあたり、大切なバラへの被害を抑えます。
夏の手入れ
7月から9月に掛けて、2回の手入れをご予定している杉並区のガーデンへ。
まずは、前回の手入れ以降に伸びた枝を整えながら庭の状態を確認して行きます。
日照環境がとても良い中央の花壇。春前に植え込んだボレロがひと回りほど成長していました。雑草も元気。
アイアン制バラのドーム
アイアン制ドームの正面奥に植えているピエールドゥロンサール。前回の手入れでは、株元に居たカミキリムシ(成虫)を捕獲しています。
幼虫の発生が気になっていた株周りに目を通して見たところ・・
株周りに積もった落ち葉を除けて状況を確認しましたが、被害の気配は感じられませんでした。
株周りの落ち葉清掃は、ブロワ(またはくまで)を用いて行うケースが多く、幼虫が排出した食害の痕跡(木屑)が消えてしまっても対処に困らないよう、被害の有無と排出場所をマークしてから使用します。
ビアンヴニュ
ドーム付近のバラに目をお通して行くと、ピエールドゥロンサールの斜め前(鉢の後ろ)に植えている、ビアンヴニュの株元から木屑が見つかりました。
木屑の排出口から居場所を特定し、まだまだ小さな幼虫(#1)の駆除に成功しました。
一番太い枝の軸になる部分をやや深く削られており、修復されやすい場所ではありますが、部分的に調子を落としてくる可能性もあるので、経過を観察して行きます。
複数の幼虫による根元の木くず
庭づくりを始める前から植わっている、品種の分からないバラが何本かあります。
その1本の根元(株元)から、複数の幼虫が排出したと思われる木屑が見つかりました。
作業姿勢を取りやすい場所だったこともあり、比較的スムーズに幼虫(#2 #3)を駆除することが出来ました。
少し目を離していたら、幼虫(#2)がアリに運ばれていました。そのまま渡しても良いのですが・・
今回は先約のカナヘビさんに。
ロサムリガニー
ここ数年、幼虫による被害を続けて受けている裏庭のロサムリガニー。
前回(花後)の手入れで株に近い位置のアナベルを間引き、対処にあたりやすい態勢を作っていましたが、やはり今季も産卵されてしまったようで、幼虫による被害の気配を感じました。
微量な木屑から居場所を特定し、幼虫(#4)の駆除に成功しました。
幼虫はまだ小さく、丁度良いタイミングで対処にあたることが出来ました。
バラの株を見て回る
幼虫による被害が5ヵ所なのと30ヵ所なのとでは、対処に要する時間が大きく異なるため、庭全体のバラに軽く目を通し、おおまかな被害状況を掴んでから対処にあたります。
初見は軽めの確認なので、対処にあたっているなか隣のバラに目を向けたところ、被害を受けているバラとして加わるケースも少なくありません。
株元近くの違和感から気配を探り、幼虫(#5)の駆除に成功しました。
枯れてしまったバラ
7月下旬ごろに孵化したと思われる、捕獲したばかりの幼虫(#5)と比較し、一線を画す大きな幼虫(#6)の食害により、つるバラが枯れてしまいました。
5月下旬ごろの管理でカミキリムシ(成虫)を駆除していますが、その頃に産卵されていた幼虫だったと考えてもサイズ差を感じるので「羽化の遅い幼虫」かも知れません。
2年越しの幼虫
羽化の時季を先延ばし「2年越しの幼虫」というのも居ますが、通常よりも遅い時季に産卵された場合や、自ら早くにバラを枯らしてしまい育成の環境に問題を抱えてしまう場合など、他の幼虫と異なるペースで成長する幼虫にあたります。
成長ペースの異なる幼虫は、他の幼虫が活性化している時季には気配を掴み辛く、進行形の被害個所とは見えない場所から発見に至るケースが多くあります。成長ペースの遅れが羽化のタイミングにも影響しているのではないかと考えています。
2年越しの幼虫か羽化の遅れている幼虫なのか、どちらにしても裏を取られてしまったことに変わりないので、データとして今後の対処に活かして行ければと思います。
聖域となる中央の花壇
ここ4年ほどで130匹前後の幼虫を駆除していますが、中央花壇の木立バラは、いまだ被害を受けていません。
カミキリムシによる被害は少なくないので、来季には当てはまらないかも知れませんが、それまでは「中央の聖域」として見守りたいと思います。
夏から秋にかけて取り組む1回目の管理を終え、カミキリムシの幼虫による食害への対処は12ヵ所となりました。2回目の管理(9月ごろ)では、枝の手入れよりも幼虫への対処が主な取り組みになると思われます。
夏の手入れ(後半)
9月中旬、夏から秋にかけて2回目の手入れに入りました。
パーゴラのバタースコッチ
前回の手入れで枯れてしまったつるバラが1本ありますが、パーゴラに2体制(同品種での仕立て)で枝を抑えていたこともあり、冬の誘引で枝をのびのび広げる設定へ変えれば、1本になった影響はそれほど感じないと思います。
バラの根元から木くず
裏庭の角地に植わるバラの株元から、幼虫による被害(木屑)の気配を感じました。
痕跡を消してしまわないように注意し、株周りの清掃から対処を開始します。
株周りの清掃を終え現れた痕跡からは、複数の幼虫により被害を受けている状況が伺えます。
まずは初期ごろの個体とくらべ、2回りほど成長している幼虫(#13)の駆除に成功しました。
排除には至りませんでしたが、幼虫(#14 #15)の居場所を特定しスプレー剤による処置を行いました。
また、隣のバラにあたるロサムリガニーの株元からも木屑(#16)が出ており、合わせて対処しています。
日の入らない場所で株の裏側に被害を受けているケースでは、居場所の特定が困難な場合があるので状況に応じて照明を使用します。
カミーユ
ドームのある中庭へ戻り、幼虫(#1)の向かいのバラにあたる、植え替えたばかりのカミーユから、落葉の上からでもわかる木屑が見つかりました。
株周りの清掃を行い、木屑から居場所を特定し、幼虫(#17)の駆除に成功しました。
被害状況に違和感を感じ、より入念に株元を探ること数分、裏側に被害の本命と思われる、幼虫(#18)の居場所にたどり着き、スプレー剤による処置を行いました。
被害の様子から、2ヵ所の幼虫が成長してしまえば、枯れ込んでしまう可能性を感じる食害のケースになります。
グラハムトーマス
カミーユの隣にあたるグラハムトーマスの根元近くから、食害をひと目で感じる、幼虫(#19)による木屑が見つかりました。
8月上旬ごろに排除した幼虫と比べ、大きく成長した個体が増えてきました。
シギョク(紫玉)
ピエールドゥロンサールの隣に植わる紫玉(シギョク)株周りの落ち葉を掃除したところ、複数の幼虫による食害の痕跡が見つかりました。
対処にあたり辛い場所なので、時間を作りじっくり取り組みます。
庭づくりによりGL(グランドレベル)が上がり、深植えとなったバラの株元から、1匹目の幼虫(#20)と隣りの枝から、2匹目の幼虫(#21)の駆除に成功しました。
株の反対へ回り込み、3匹目の幼虫(#22)の駆除にも成功しました。
ドームがあるので、写真で見るより対処にあたり辛い場所です。
アプリコットの木立バラ
勾配のある花壇(ドームの隣り)に入り清掃を開始したところ、アプリコットの花を咲かせる木立バラの株元から、落葉が積もっていても分かるくらいの木屑が見つかりました。
株周りの清掃と枯れ枝を取り除き、2回目の手入れの中では大きなサイズにあたる、幼虫(#23)の駆除に成功しました。
個体が大きくなるにつれ、バラが受ける被害も深くなっています。
食害の受け方により小さな被害とはいえないこともありますが、それでもこの時季に処置することが出来れば、まだ被害を抑えることに成功したと思えるケースがほとんどです。
今回の手入れの中では大きなサイズとなる、幼虫(#23)ですが、ひと月以上も前に捕獲した幼虫(#6)は、さらにひと回り以上も大きく、想定外のケースであったことが伺えます。
ホワイトメイディランド
清掃前で手を入れ辛い状況ですが、枝の枯れ込みが見られるので、カミキリムシにより被害を受けているものと思われます。
幼虫は逃げ出さないので、向き合える態勢を整えてから対処にあたります。
株元から10cmほど上の枝から、幼虫(#24)を駆除することが出来ました。
壁面のバラ
庭づくりを始める前から植わっているバラは、壁よりに植わっているものが多いため、株の裏側が被害個所となった場合には対処にあたり辛いケースになりますが、幼虫(#25)は、手の届く正面の枝を住処にしていのでスムーズに駆除することが出来ました。
夏から秋にかけて取り組んだ2回の管理を終え、カミキリムシの幼虫による食害への対処は25ヵ所となりました。
いまのところ昨季の駆除数と比べると半分以下になりますが、枝先の食害は葉が減り始めてから目に付くようになり、株元でも幼虫(#6)のように逃れているケースがあるので、秋から冬の手入れへと抜かりなく対処にあたって行ければと思います。
聖域と呼ばれる花壇
聖域と呼ばれる中央の花壇(右側)は、今回もカミキリムシによる被害を退けています。
雨が多く予定がかなり削られてしまいましたが、冬作業の開始までにレンガの作業を出来るところまで進めます。
エクステリア作業に取り組んでいても、株周りには目を通して行きます。
カミキリムシ幼虫への対処
バラの風景を深めて行く上で、カミキリムシの幼虫による被害への対処(駆除)は、外せない管理と考えており、ウッドチップスで取組む全ての作業に取り入れています。