バラの季節管理では、春から秋にかけバラの育成に携わり、庭の景観を整える作業を行います。

カミキリムシの発生時季にあたる夏から秋の手入れでは、見回りから対処にあたり、大切なバラへの被害を抑えます。
夏の手入れ

バラの花後から秋までに2回の手入れをご予定している、武蔵野市のガーデンへ。
まずは建物の壁面からポーチに掛けて誘引している、つるアイスバーグから手入れに掛かります。
高所の枝は浅めの剪定と軽めの誘引で整えます。
鉢底を抜いたレイズドベッド

レイニーブルーを植えている樹脂の鉢は、鉢底を抜きレイズドベッドとして用いています。
鉢の下には10cmほどの浅い溝があり、鉢よりも根を伸ばしてくれた時のサポートとして適した用土に入れ替えています。
春先に鉢から1mほど離れた場所を掘り返す機会があったのですが、溝に沿うようにレイニーブルーが根を伸ばしていました。
環境に順応している様子を踏まえ、施肥(お礼肥)の範囲を広げます。
枝にとまるゴマダラカミキリ

手入れに取り掛かる前にバラを見渡すと、ナエマの枝にとまっていた「カミキリムシ」が目に付きました。
近隣にカミキリムシの発生元があるようで、毎年産卵されてしまい、4~6匹ほどの幼虫を駆除しています。
次回の手入れ(8月~9月ごろの予定)では、バラの調整と植木の刈り込み、そしてカミキリムシ幼虫への対処が主な取り組みとなります。
秋の手入れ

9月に入り、夏から秋の手入れ(2回目)に入ります。
バラの手入れは前回と同じ流れで、フロントにあたるポーチ周りのつるバラから、裏庭のバラへと進めて行きます。
まずは、カミキリムシの幼虫による被害状況を把握するため、庭をひと回りします。
葉を害するウメスカシクロバ

地域により発生数に違いはありますが、今季はどこの庭でも「ウメスカシクロバ」による葉の食害が目に付きました。
葉を食べ切らず、透かしたり残したりするので、茶色く傷んだ葉が目立ち、脱皮した皮と糞とで景観を乱します。
カミキリムシによる根元の木屑

幼虫による被害状況の確認から、駆除作業に掛かるであろう、およその時間を割り出し、手入れのペースを組み立てます。
- 1ヵ所の幼虫駆除に掛かる時間は、食害を受けている位置や状況により前後しますが、移動を含め3分~20分ほどで計算しています。

開始前のひと回りでは、食害(木屑)の気配を感じる場所を6カ所ほど確認しています。
生垣の奥など対処にあたり辛い場所もあり、駆除作業にあたる時間を増やしたかったので、ペースを上げてバラと植栽の手入れに取り組み(念のためお昼を短縮)予定より早い時間に作業を切り替えることが出来ました。
ティージング・ジョージア

ここ数年、カミキリムシ幼虫による食害を続けて受けている、ティージングジョージア(写真左側)の根元近くから、幼虫(中期・2令)が排出した木屑を発見しました。

食害による被害の状況はやや深く、特定した幼虫(#1)の居場所へ、殺虫スプレーによる処置を行いました。
出来るなら幼虫を排除してから穴を塞ぎたいので、ひとまず保留として次のバラへ移動します。
- 幼虫の食害によりあいてしまった穴には、ダンゴムシやアリ(その他の虫)が住み着いてしまうケースがあります。また、雨や土が入ることで株の傷み(腐れ)につながる恐れもあります。
セントスウィザン

ティージングジョージアの隣に植わっている、セントスウィザン(写真中央)の株元から、被害を受けている状況がひと目で分かる、幼虫による木屑が排出されていました。


初期ごろの個体とくらべ数倍は成長している、幼虫2匹(#2 #3)の駆除に成功しました。

食害の受け方が良くないため、駆除には成功していますが調子を落としてしまう可能性も考えられます。
対処にあたり辛い場所だったので記録はありませんが、セントスウィザンの隣にあたる(写真右・生垣の奥)ピエールドゥロンサールからも幼虫による木屑(#4)が排出されており、居場所を特定し殺虫スプレーによる処置を行っています。
つるアイスバーグ

裏側の対処を終え、フロン側で目星を付けていた「つるアイスバーグ」株元への対処にあたります。


被害の痕跡を探り、1匹目の幼虫(#5)の駆除に成功しました。
木屑の様子から複数の幼虫による被害と予測していたので、抜かりなく2匹目の駆除(#6)へつなげることが出来ました。

固体が大きくなり、バラが受ける被害も深くなってきました。
食害の受け方により小さな被害とはいえない場合もありますが、この時季に処置することが出来れば、まだ被害を抑えることに成功したと思えるケースがほとんどです。

幼虫に空けられてしまった株元の穴は、2次被害予防のため塗布材を用いて塞いでいます。
ザ・ウエッジウッド・ローズ


初見では散水後だったようで見分け辛い状態でしたが、木屑が乾燥し被害の様子が見て取れる、鉢植えレイズドベッド「ザ ウエッジウッドローズ」の対処にあたります。
写真では分かり辛いですが、すでに枯れ込みが進行していたので、幼虫(#7)を排除した後に枝を剪定しています。
- こちらは、深植えにあたる株から分岐している枝になりますが、若い株や細いバラも同じような形で被害を受ける可能性があります。

ザ ウエッジウッドローズは、アイスバーグの株からもっとも近い、隣のバラにあたります。
ポーチから壁面にわたり枝を広げている、つるアイスバーグには、ザ ウエッジウッドローズのほか「レイニーブルー」「ナエマ」が枝を重ねています。
そして、連鎖的に被害を受けてしまった次のバラは・・
ナエマ

カミキリムシ(成虫)の発見場所にあるナエマの根元付近から、開始前の見回りでは目に留まらなかった木屑の排出痕(#8)が見つかりました。


雨や清掃などで痕跡となる木屑が消えてしまうことや、排出口を特定し辛いことは良くあり、取り組み時間を開けることにより「再び木屑が排出される」など良い結果へつながるケースも少なくありません。
ナエマの斜め向かいにあたる「春風」からも2ヵ所から木屑が排出されていました。こちらは過去に受けてしまったダメージが大きく改善策を講じてきましたが、いよいよ持ち直せる気配がなくなり枯れるバラとなりました。殺虫スプレーによる処置(#9)を行い、処置し難い場所の食害を保留(#10)としています。
枝でつながる連鎖的な被害ケースになりましたが、別個体のカミキリムシによる産卵が、偶然連なる流れに加わったと考える方が可能性としては高いと思いますが、その辺りはあまり重要ではないのでどちらでも良いです。
今回の手入れでは、お昼を短縮した甲斐もあり、カミキリムシ幼虫による10カ所の被害(食害)に対処することが出来ました。
庭に植わっている15本ほどのバラに対し、8本が被害を受けてしまったケースとなり、例年よりもやや多い被害数になりますが、1匹の成虫が加わるだけで収まる範囲なので、近隣の発生元にも大きな変化は無かったものと思われます。
次回は、バラの冬作業(早い時季のご希望により)11月ごろの手入れを予定しています。
カミキリムシ幼虫への対処
バラの風景を深めて行く上で、カミキリムシの幼虫による被害への対処(駆除)は、外せない管理と考えており、ウッドチップスで取組む全ての作業に取り入れています。